野球肘の原因と発生メカニズム
野球肘とは
投球動作を繰り返すことで起きる肘関節その他組織の損傷のことで、一つの障害を指すのではなく様々なものが含まれている。
野球肘と一言で言っても障害が起きる肘の場所や年代によって起きる状態が異なります。
≪発育期の野球肘(小~中学生)≫
○肘の内側の痛み
内側上顆下端障害
投球フェイズ(トップ~リリースの間加速期)に肘の内側が痛む
発育期では体の骨がまだ十分に育っておらず、前腕の筋肉や靭帯に骨が引っ張られて付着している軟骨に炎症が生じる。
症状が進むと付着している場所(骨端線)の軟骨が剥離・離開してしまう。
○肘の外側の痛み
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)
反復する外反ストレスによって肘の外側に圧縮ストレス、剪断力がかかり上腕骨小頭という部位に骨折を生じて次第に壊死を起こしてしまう病変
肘の違和感、腫れ、伸びづらさが初期に見られるが、我慢すれば投球ができてしまうので、症状が進んでしまうことがある。
○肘の後ろの痛み
肘頭骨端線離開
投球フェイズ(フォロースルー)において、手首を外側にひねるような投球を繰り返している(まれにスライダーやカーブでの投球で見られることがある)と肘が伸びきってしまい肘の後ろ側の骨が衝突を繰り返す。これにより肘の後ろにストレスがかかり肘頭に炎症や骨折が起きる。
☆発育期の肘の痛みは、何が肘で起きているか把握することが大切です!
「これぐらいの痛みなら」と軽視せず、違和感が出ている時点で専門機関を受診することが大切です。
その後肘のケアだけでなく全身のバランス、筋力、柔軟性などその他の部位への施術も大切ですので、肘のみのケアで終わらせないようにしましょう。
≪高校生~社会人≫
高校生になってくると骨の発育が進み骨に起きる問題よりも筋肉、靭帯に起きる障害が増えてくる。また発育期に起こした障害を持ったまま継続している場合もあります。
内側側副靭帯損傷
読んで字のごとく肘の内側の靭帯の損傷、原因としては球数、登板間隔、投球フォーム(肘に負担のかかる)、変化球(来院している子らの感じ実感としてはスライダーの投げ方に問題があるのでは?)球速が上がると、全力投球などといわれているが、この中の一つがというよりも、球数を投げていても腕に負担がかかっていなければ発生しないと考えられるし、球数が少なくても全力投球でフォームを崩しながら投げれば発生してしまうとも考えられる。
積み重ねの負担が障害の発生になる場合もあれば、その日のコンディションによって発生してしまう場合もあると考えられており、まだまだ議論されているものであります。
○発生メカニズム
発生要因は様々ありますが、投球フォームに着目し、発生要因となりうるフォームの「一例」を上げます。
☆肘下がり
この肘下がりはよく聞く単語だと思います。
この肘下がりはどこの場面でおこると肘に負担かご存知でしょうか?
下の画像を見てみましょう。
この画像のようにトップの位置で肘が肩のてっぺんより下がって見える選手がほとんどです。もちろんこれより極端に下がりすぎたり、上がりすぎたりはいけませんが、このトップでは肘下がりよりも、重要なポイントがあります。
それは、肘の位置ではなく、トップを作る前に体が回り始めると肘にかなりの負担がかかるということです。
なぜ、トップを作る前に体が回り始めてしまうのかは個々では述べませんが、このことがとても大切です。
ではどの場面で肘が上がっていなくてはいけないのか。
下の画像を見てみましょう。
体が回転しリリースに向けてボールが後ろへと取り残されているところでは肘が上がっていないと肘にかなりの負担がかかります。
また逆にトップで肘が上がりすぎている場合こういうことが起きる可能性があります。
あまり肘を上げろ上げろ行ってしまうと逆効果の場合があります。
肘下がりのところに注目して書いてありますが、このほかにも肘の痛みの原因は投球フォーム一つとってもまだまだ改善ポイントはいくつもあります。
当鍼灸院では、痛みの出ている肘の鍼灸治療はもちろん、体全体の評価、検査をして投球フォームに影響のある筋力・柔軟性を改善させるため施術やトレーニングを行います。
野球肘症例1
また、フォーム自体の分析・アドバイスも行っておりますので、肘の痛みがないけどもっとパフォーマンスを上げたい方も是非一度ご予約の連絡をください。