~妊娠中の体の痛み~
妊娠中に腰の痛みや膝の痛みなど様々な痛みを訴える方は少なくありません。
なぜ痛みが出るのか?
ここでは妊娠に伴い、特に変化の大きい筋肉や骨格の変化について書いていきたいと思います。
☆まず第一に見た目でもわかるように妊娠中は胎児の成長に伴い子宮の容積と質量が大きくなることによって体のバランスが大きく変化します。
○姿勢の変化
その人その人の体格やもともとの生活習慣によって姿勢の変化は様々であり一概には言えませんが・・・
安定性を高めるために、がに股気味になり、腰を強くそった姿勢(胸椎後湾および腰椎前弯が増加し、股関節が外転外旋の姿勢)が一般的といわれています。
確実に言えることは未経産の女性と比較して妊婦の姿勢は不安定な状態であるということです。
不安定な状態で日常生活を送ることにより体を痛めるリスクは大きくなります。
○バランスの変化
妊娠期では、足で支える力に対して体幹(胴体部)の質量が大きくなっているので動作が困難になり、余計な力がかかってしまう。これにより関節にかかる負担も増えることになる。
また左右方向に対しては足を広げることでバランスをとることができるが、前後方向に対しては体重の支持が不安定になりやすく腰の力で支えてしまうような動作も多くなり、腰の痛みが出やすい状態となる。
○動作の変化
日常動作の中での動作が変化し体に負担がかかる動作になっていきます。
立ち上がり動作を取り上げてみると、本来体を前に倒せば重心が足の方へ移り、力学的に足からお尻にかけての複数の筋肉を使い立ち上がることができます。
しかし妊婦さんでは前屈しても重心が前方にあまり移動せず、立ち上がることになります。
そうなると主に太ももの前の筋肉が大きく働いてしまい疲労が蓄積され膝の痛みにつながってしまいます。
○体を支持する筋肉の変化
おなかが前に張り出すことに伴って筋力が低下し、時には腹筋の離開(主に腹直筋)が起こります。
腹直筋離開は体幹の安定性の低下を引き起こすものと考えられます。
また子宮の重量・容積が増えるに従い、骨盤底筋群は引き伸ばされ弱くなってしまいます。これにより尿失禁なども引き起こされ、出産後も弱ったままだと尿失禁が治らなかったり、腰痛の原因になりえます。
☆次にホルモンの分泌の影響があります。
○ホルモン
ここで大きく影響を与えるホルモンは「リラキシン」というホルモンです。
妊娠を継続するために分泌量が増加するホルモンのうちリラキシンというホルモンはコラーゲン繊維に主に作用します。
関節をつなげたり安定させている靭帯というものがあるのですがこれには多くのコラーゲン繊維が含まれています。
リラキシンの作用は特に骨盤周囲の筋肉や靭帯に作用し緩ませる働きがあります。
妊娠継続のため子宮筋を緩ませるように働きます。
それに伴い骨盤周囲の靭帯(主に恥骨や仙骨をつなぐ靭帯)に作用することで骨盤を不安定にします。これで不安定になり骨盤周囲や腰背部の痛みの原因になることもあります。
☆最後に
腰背部痛など妊婦の50%以上が経験する症状といわれています。一般的に妊娠中に生じる症状の中でもマイナートラブルとされてしまい、医療的なケアが十分にされないことが多いようです。
しかし、このような症状があると日常生活が送れなくなったり、夫婦間や家族間のトラブルにまで発展してしまうことも考えられます。
また腰痛などをきたす症状は身体的な変化がもたらすもの以外に、子宮収縮や腎臓・尿路の疾患があることもあるので注意が必要です。
当院では、身体変化に伴う痛みに対しての治療や妊娠中行えるセルフでのストレッチなどのケアをお伝えしています。出産後のケアも行っておりますのでお気軽にお問い合わせください。